倒産を回避するために、赤字経営となっている事業を見直すことで、立て直しを図る手法の一つである事業再生を行う必要が出てくることがあります。ただ、倒産してしまうかもしれないという危機感から、何から手をつければいいのか、思うように動けなくなることも少なくありません。ですが事業再生を成功させることができれば、会社を倒産させることなく経営を回復させる目処がつきます。それは会社の事業だけでなく、会社の従業員を守ることにもなるのです。そこで知っておきたい事業再生の基本的な流れとすべきことについて詳しくご紹介します。
事業再生の大まかな流れ
事業再生には法的再生と私的再生という2つの方法があります。どちらを選択するかによって、事業再生の流れも変わってきますが、ここでは事業再生に至るまでと事業再生を実行するための流れを基本的な面からご説明します。
1.現状の把握
事業再生を行う場合、まずは現状を把握する必要があります。赤字であっても、採算がとれない事業を切り離したり、採算が見込める事業に資金を投入したりすれば、黒字になる可能性が見込めれば倒産を回避することができるからです。とはいえ、債務の返済ができない状態では再建できるのか不透明であり、倒産して清算した方が問題を早期に解決できる可能性もあります。ただし、倒産の手続きは簡単ではなく、社会的な信用を失い、従業員の解雇をしなければならないなど心身共に大きな負担がかかります。まずは事業再生が可能かどうか、会社の財務状況を把握する必要があります。その上で、事業再生の経験や実績を持つ専門家に相談するようにしましょう。
2.事業再生の選択
事業再生には裁判所に介入してもらう法的再生と、債権者との話し合いを自ら行う私的再生の2つの方法があります。今の会社の財務状況で、どちらを選択するかを考える必要があります。法的再生は、第三者である裁判所が介入するため、比較的スムーズに事業再生が進みますが、実質的には倒産とほぼ変わりません。事業再生をしていることを取引先に公開されてしまうからです。一方の私的再生は、自社で選択した債権者だけと話し合うことになるため、事業再生をしていることを取引先に知られることはありません。ただ、債権回収の目処がつくような事業があればいいのですが、すぐに黒字にすることは簡単ではありません。そのため、事業再生を開始してから1年以上かかることも多く、3年近くかかる場合もあります。
3.事業計画の作成
法的・私的再生どちらを選択したとしても、作成する必要が出てくるのが事業計画です。3年以内に黒字にすることを数字で証明するためです。債権者に理解を得る目的もありますが、投資する価値のある事業を持っていることをアピールし、新たなスポンサーを得るための材料にもなります。また金融機関に融資を依頼する際にも提出が求められるため、事業再生を考えているなら、早めに作成しておく必要があります。
4.資本の増強や採算の取れない事業からの撤退を行う
黒字化するためには、採算が取れる事業だけでなく赤字の事業を切り離す判断も求められます。さらに新しいスポンサーや資本追加のために新しく融資先を探す必要も出てきます。判断は難しいのですが、判断が遅れればそれだけ事業再生にも遅れが出ますので、経営と同時進行で行う必要があります。
5.事業再生の手続きと実行
事業再生の計画と、それを実行するための資金繰りの目処がついてから、事業再生を実行します。手続きについては専門家に相談しながら進めることをおすすめします。法的再生の場合は裁判所の指示に従いますが、私的再生の場合は進捗状況などを常に確認しないとトラブルにつながることもあるためです。債権者への返済が終了すれば、事業再生は完了します。