経済産業省によって実施されている事業再構築補助金は、コロナ禍で売上が落ち込み、新たな事業展開を目指す中小企業や中堅企業向けの補助制度として、「中小企業等事業再構築促進事業」が予算計上されたことで、注目を集めています。その一方で、申請が難しく採択率は3割と、補助金をもらうことはハードルが高いと感じる人も少なくありません。そこで事業再構築補助金とはどんな制度なのか、またどういった点に注意が必要なのか、詳しくご紹介します。
事業再構築補助金とは今の会社を大きく変える際の補助金制度
事業再構築補助金が通常の補助金制度と大きく違うのは、会社の経営を立て直すためにではなく、会社の方針を大きく変えることに対して支払われるものであるということです。通常の補助金制度では、さほど厳しい条件はなく状況が当てはまれば補助金が支給されます。ただし返済不要なだけに、支援される額は大きくないことがほとんどです。その一方で、事業再構築補助金の場合は、補助される額が大きいのが特徴です。その分申請のハードルが高いともいえます。
事業再構築補助金を受けるために必要な3つの要件
事業再構築補助金を受けるにあたっては、以下の要件を満たしていることが前提となります。
1.売上が10%以上減少している
コロナの影響によって売上が減少していることを提示する必要があります。2020年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上とコロナ以前の2019年、もしくは2020年1~3月の3ヶ月の売上と比較して10%以上減少している、さらに2020年10月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上がコロナ以前の3ヶ月の合計売上と比較して5%以上減少していることが要件となります。この任意の3ヶ月間は連続している必要はないので、6ヶ月のなかで売上が低い月だけを選ぶといったことも可能です。注意が必要なのは、新型コロナウイルス感染症によって売上が減少した企業が対象となっていることで、単に売上高が減少しただけでは対象にならないという点です。
2.事業再構築に取り組むこと
事業再構築については、
- 新分野展開(業種や事業は変えず新たな製品を作り、新たな市場に進出する)
- 事業転換(業種は変えず、主な事業を変更する)
- 業種転換(新たな製品を作ることで、主な業種を変更する)
- 業態転換(製造方法を変更する、もしくは提供方法を変更する)
- 事業再編(合併や分割といった組織再編を行い、新分野展開や事業転換、業種転換や業態転換を実施する)
のいずれかに当てはまる事業計画を策定することが求められます。
3.認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること
事業再構築をするといっても、実際に実施して結果が出なければ意味がありません。そのため、専門家と一緒に事業計画を作成し提出する必要があります。また補助金額が3,000万円を超える案件の場合には、金融機関も策定に関わることになります。事業計画でどれだけアピールできるかが補助金対象となるための大きなカギとなります。
事業再構築補助金はどれぐらい補助されるのか
今までの事業を大きく変換させる必要があるため、補助金の額は気になるところです。中小企業枠と中堅企業枠の2つの枠があり、さらに特別枠があります。中小企業は100万円からですが、従業員の数に応じて最高8,000万円が補助されます。さらに卒業枠として限定400社に対しては6,000万円から1億円の補助金が支給されます。この卒業枠は、再編やグローバル展開で資本金や従業員が増え、中堅や大企業に成長した企業が対象です。中堅企業に対しては、100万円から従業員の数に応じて8,000万円が補助されます。中小企業との違いは補助率で、中小企業が3分の2に対し、中小企業は2分の1となっている点です。さらに中堅企業に対しては、100社限定のグローバルV字回復枠があります。こちらは大きな成長を目指す企業向けとなっています。それぞれ特別枠で事業計画が採択されなかった場合、そのまま通常枠での審査となります。