事業再生の新たな選択肢として注目されている事業再生ADRですが、法的・私的再生のメリットを兼ね備えているとはいえ、デメリットもあります。今の会社の現状をみて、どの事業再生方法を選ぶのが最適か考える必要があります。そこで事業再生ADRのメリットやデメリットについて詳しくご紹介します。
事業再生ADRの果たす役割は早期に会社を救うこと
資金難や返済不能といった危機的状況から脱出するためには、早急に会社の事業を立て直す必要がありますが、ぎりぎりの状態で身動きが取れなくなり倒産しか選択肢がないといった危機的状況に陥ることも少なくありません。会社が危ない状況にあるということは、財政面からも毎日の取引先とのやり取りの中からも読み取れるものですが、「まだ何とかなる」と楽観的に考えている間に一気に経営が悪化してしまうのです。ただし、悪化の一途を辿る経営を大きく改善することは簡単ではありません。借り入れているお金の利息を払うだけが手一杯という状態では、事業を拡大することも難しいからです。そこで会社を救う方法として、事業再生や企業再生を考える必要があります。ただ、事業再生は会社を立て直すために債権者を納得させる、「業績を確実にあげる」事業がなくてはなりませんし、具体的に「5年以内」に会社を立て直す計画を立てる必要があります。大企業なら何とかなる可能性もありますが、中小企業の場合は立て直す余裕すらなくなってしまうことも考えられます。それだけ事業再生は難しく、時間がかかる方法なのです。ですが事業再生ADRは、早期に再建を目指す中小企業を支援するために誕生した制度であり、短期間での立て直しが可能です。ただ、事業再生ADRにはメリットもありますがデメリットもあるため、事前に把握した上で決断する必要があります。
事業再生ADRのメリット
法的再生と私的再生のそれぞれの長所を組み合わせた事業再生ADRには、以下のようなメリットがあります。
事業再生をしていることが公開されない
取引先や同じ業界の競合会社に事業再生をしていることが知られないため、通常通りにやり取りが続けられます。会社内の営業にも影響がなく、社内に不用意に不安を広げることもありません。
信頼できる第三者に手続きを任せられる
ADRのやり取りは、国が認定した団体に任されています。事業再生に関する知識はもちろんのこと、専門家への依頼もすべて任せることができるのが心強いです。また債務者とのやり取りもしてもらえますので、通常の業務に支障が出ることもありません。
手続きにかかる時間が短くて済む
手続きは早く、3ヶ月前後で終わることがほとんどです。事業再生は3ヶ月から1年以上と差が出ることも多いため、短期間で済むことで再建もしやすくなります。
節税につながる
事業再生ADRで減免・免除された債権については、損金処理が可能です。このため税金の面でも節税になるメリットがあります。
事業再生ADRのデメリット
メリットの多い事業再生ADRですが、デメリットも知っておきましょう。
手続きが厳しい
法的再生のように裁判所が間に立つわけではないものの、私的再生よりも手続きは厳しくなっています。また私的再生のような柔軟性もない点に注意が必要です。
債権者全員の賛同が必要
短期間で事業再生が可能ですが、債権者全員の同意を得られることが前提となっています。法的再生の場合は多数決で賛同が得られれば実行できるので、その点を考えると実行は難しいといえます。ただ、私的再生でも全員の賛同が必要ですが、第三者が関与するため私的再生の場合と違い、交渉を任せられる点はメリットともいえます。