会社の経営が危ぶまれている状況では、様々な方法で会社を立て直す必要があります。倒産という最悪の事態を回避するためにも、受けられる支援やするべき行動について、経営者として理解しておかなければなりません。そこでよく耳にする「事業再生」と「企業再生」の違い、またその内容について詳しくご紹介します。
事業再生と企業再生に明確な規定はない
法律上、事業再生と企業再生という用語はなく、そのためどちらも同じような意味で使用している場合もあれば、区別して使われていることもあります。ただ、使用する場合に「会社全体を立て直す」という明確な目的がある場合には「企業再生」が多く使われます。そのために手段として使われるのが「事業再生」であり、会社自体が存続しなくなる、清算を行った場合や他企業との合併、事業の譲渡といった場合には企業再生という呼び方はしません。この2つにどんな違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。
事業再生とは事業に着目した再生方法
事業再生とは、会社の事業だけに着目し、改善や改革を行うことで収益を上げられるようにすることをいいます。同時に赤字になっている事業を切り捨てる決断も必要です。会社が経営難になってしまうと、資産を処分して負債の返済に充てたりしがちですが、そうすると事業が立ち行かなくなり、将来性のある事業まで失うことにもなりかねません。そういった事態を回避するためにも、事業を立て直していくことが求められます。その手段が事業再生なのです。
企業再生は企業を主体とした再生のこと
事業再生とよく似ていますが、企業再生とは法人であることを維持しながら再生することをいいます。事業再生の場合は、法的再生といって裁判所が介入する方法がありますが、一般的にはこれは倒産と同義です。会社ではなく会社の持つ事業に価値があることが重視されるため、会社が存続しなくても事業再生ができれば成功と考えられます。ただ、事業が存続できたとしても、会社自体は別の会社に吸収される、また会社自体がなくなるため、人員整理が行われるなど影響は小さくありません。逆に企業再生の目的は債権回収であるため、事業再生を行いながら会社の立て直しを図ってもらうほうが、資金援助をしている金融機関側からはメリットが大きいといえます。そのため、債権者側からは事業再生ではなく企業再生という呼び方をします。
事業再生ができず企業再生をする企業が増えている
事業再生は「将来性がある」「これから収益が見込める」と具体的な数字を挙げられる事業がある場合に有効な方法です。とはいえ、大企業のようにいくつもの事業を並行して進行させている会社ならいざしらず、中小企業の場合は主となる事業がひとつしかない場合や、大企業からの受注が主な収益となっていることも少なくありません。そのため企業再生で抜本的な事業の見直しと会社の立て直しが必要となります。
企業再生ができるための条件
会社を存続させたいと考えていても、その条件が揃わなければ企業再生は行えません。
- 経営者にやる気がある
経営者が現役世代であり、再生に意欲がある、また気力と体力があることが必須です。 - 赤字が解消できる
事業再生で赤字が解消されてもまた再び財政難に陥ることがないかどうかが重要です。 - 再生可能な事業がある
他の競合企業にない事業がある、将来性のある事業があるかどうかも重要です。 - 債権者の協力が得られる
金融機関の協力が企業再生には不可欠です。
これらの条件がクリアできるかどうかは、経営者の判断だけでなく専門家による会社の現時点での財務状況の分析も必要不可欠となります。